渾身のハードボイルド!『BROTHER(ブラザー)』北野武 – あらすじ[解説,考察,感想]

2017年12月23日

北野武監督がハリウッドに殴りこみ!

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北野武監督まとめ

あらすじ/ストーリー

 ヤクザの山本(ビートたけし)は、組の抗争の中で居場所を無くし、弟(真木蔵人)を頼ってアメリカへと飛んだ。留学後消息が絶えていた弟は、仲間のデニー(オマー・エップス)らと共に、麻薬の売人に成り下がっていた。

 そんな中、麻薬取引のトラブルをきっかけに、山本はアメリカで新たな組を作ることになる。後を追ってきた舎弟の加藤も加えて、山本は組をどんどん拡大していき、ついには日本人街を仕切るマフィアを傘下に収めた。

 しかし、徐々に現地の巨大イタリア系マフィアの影が見え始め、仲間が次々と殺されていき、山本たちは追い詰められていく。

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解説,考察,感想

 北野監督が自身で語っているように、『BROTHER」』のストーリーはシンプルで見やすいです。また、監督にとっては、海外ロケ、ハリウッドの手法の導入、脚本作り、娯楽性の追求など、新たなことにチャレンジしたという面が強いようです。

 監督自身は名場面が少ないと言っていますが、シンプルなストーリーの中で北野映画らしさが良いアクセントになっていて、完成度がとても高い映画だと思います。何度か出てくるデニーと賭けをするシーン、有名な「ファッキンジャップくらいわかるよバカ野郎!」、そしてラストシーンも印象的です。

 また、ソナチネとの比較についても言及していますが、いつものヤクザものからドロドロした部分を抜き、無駄な部分をそぎ落としてスマートにした映画だと思います。

北野武監督のインタビューから見る『BROTHER』
(解説・撮影秘話・映画論)

ハリウッド映画への意識、海外の反応など

  • マイノリティが……ヒスパニックとか黒人とか日本人が手ぇ組んで、アメリカのイタリアン・マフィアに挑戦するって話で。頭の中に、イランとかイラクがアメリカに戦いを挑んでいる、みたいな感じがあって。根底はそれなんだよね。
  • 「BROTHER」は、脚本をがっちり書いて、そのとおりに撮ったのは、あのハリウッドのシステムからいえば、ちゃんと書いて、ちゃんと脚本ができてないと、どうしていいいかわからないんで。
  • 「BROTHER」っていうのは、黒人が言う「ブラザー」でもあるし、ヤクザの「兄弟」でもあるし。
  • 中東ではすごい人気で(中略)マイノリティがアメリカにチャレンジしてるっていうか。韓国の釜山でも、「ファッキンジャップくらいわかるよバカ野郎!」って言った瞬間に、みんな、「おおおおおー!」って盛り上がったって(笑)

引用元:「物語 」(北野武)より

 日本ではあまり知られていないのがこれらの部分。北野監督自身も初めてハリウッドに進出するということもあって、作品の中では日本人のヤクザがアメリカに乗り込み、現地で黒人やメキシコ系の人と手を組み、最終的にはアメリカのイタリア系のマフィアに喧嘩を売る、という構図になっています。

 この構図は、アメリカにおけるマイノリティ(アジア系、黒人、ヒスパニック)と白人のマイノリティとの対立を意味しています。アメリカではこれらの人種間の差別が大きく、この構図をもって映画を書いたら日本人が感じる以上に降り上がる、というわけです。

 アメリカでは残念ながら大きなヒットには結びつきませんでしたが、見る人が見ればわかる映画。あのクリント・イーストウッドがたまたまこの映画を見て、その迫力に圧倒されたという逸話があるほどです。

監督自身による作品の評価

  • あの寺島(進)が死ぬとこ※1は、あれ、結構、かっこいいシーンだなあっていうか。(中略)あれ、一緒に組まねえかって言ったときに、どうやって手ぇ組むかっていうのがひとつのテーマじゃない? (中略)あれがないとあの映画、締まんないんだよね。だから、あのシーンはキーだね。
  • 脚本もわりかししっかり書いてるし、わかりやすい映画だと思うんだけど、ただ、基本的にね、名場面ってのが少ないのよ、あれ。(中略)「頼むぜ、オジキ」ってシーン※2があるけど、ほんとはあれと同等なのが、あと2個か3個ないとダメだよね。

引用元:「物語 」(北野武)より

※1,2……寺島進が演じる山本の舎弟「加藤」が、日本人街を仕切るマフィアを傘下にいれるために、自らの命をかけるシーン。

  作中の印象的なシーンについてのコメント。実際には「ファッキンジャップくらいわかるよ馬鹿野郎」という名シーンもあるかと思います。ただ、確かに従来の北野映画と比べると印象的な暴力シーンなどは控えめになっています。この映画での半生は、後のアウトレイジシリーズに活かされていると個人的に思います。アウトレイジでは観客が痛みを感じるような残虐シーンが目白押しな一方、暗く静かなハードボイルドという点ではこの映画と似たところがあります。その辺を意識して2作を見比べてみるのも面白いかと思います。

作品の位置づけについて

  • 娯楽映画になってるとは思うんだけども。単に娯楽映画だけになるのはイヤだから、どうにか抵抗したって感じだね
  • 「ソナチネ」で失敗したとこちゃんと入れたっていうのはあるよ。だから「ソナチネ」の完成版ていうか(中略)車でエンジンとか足回りはいいんだけど、他が駄目だっていうのがあって、その部分を少し大衆的にしてよくなったって感じなんだ

武がたけしを殺す理由 」(北野武)より

 一方でソナチネとの比較では大衆性を付与して上手くいったというコメント。これは言い方が悪いかもしれないですが本作では「見栄えが良くなった」ということだと思います。車の例えを拝借すれば、ソナチネはエンジンや足回りは素晴らしいものの、ボディはクラシックや渋い中古車といったイメージがあります。一方で本作では、メタリックの黒塗りのボディに進化しています。作品の映像面でいうと、現代的で硬質な映像が目立ちます。そういう意味でも、完成度の高さが覗える本作というわけです。

脚本について

  • ロケハンに行ってもねえ、まだ脚本いじってた。ロケハンの間じゅう毎日、助監督呼び出してねえ、「また台本変わった」って。もうその時点で順撮りやってんだよな、頭ん中で。

武がたけしを殺す理由 」(北野武)より

 普段は「順撮り」で撮影を行う北野監督。脚本もアバウトなものを作っておき、撮影する中で修正を加えて練り上げていくそう。ところが、「BROTHER」ではアメリカのスタッフと共同制作ということで順撮りができず、脚本も事前にしっかり作る必要があった。そのため、ロケハンの際に頭の中で順撮りの作業をしたというわけです。

  • (いつもは脚本をアバウトにする理由について)
    脚本書いた時点で大体映画って想像つくじゃない? それ絵にするだけだから。脚本書いてる時点で結構飽きてきてるとこあるんだよ。

武がたけしを殺す理由 」(北野武)より

 脚本作りなどの細かいところでもすべて現地流のハリウッド的制作を取り入れた本作。他の作品とは一味違う『BROTHER』は個人的にお気に入りの一作です!

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