『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』のレビュー・書評

2017年11月8日

ブラック企業の特徴と社会背景

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)

もくじ

『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』のもくじ

【第Ⅰ部 個人的被害としてのブラック企業】
  第1章 ブラック企業の実態
  第2章 若者を死に至らしめるブラック企業
  第3章 ブラック企業のパターンと見分け方
  第4章 ブラック企業の辞めさせる「技術」
  第5章 ブラック企業から身を守る
【第Ⅱ部 社会問題としてのブラック企業】
  第6章 ブラック企業が日本を食い潰す
  第7章 日本型雇用が生み出したブラック企業の構造
  第8章 ブラック企業への社会的対策

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)』より

あらすじ

第1~3章 労働者の実体験からブラック企業のパターンまで

  • 第1章  ブラック企業の実態
    ……ブラック企業で働いていた人の実体験を紹介
  • 第2章 若者を死に至らしめるブラック企業
    ……「ウェザーニュース」「大庄」「ワタミ」「SHOP99」といった企業を例に、雇用・労働に関する問題点を指摘。
  • 第3章 ブラック企業のパターンと見分け方
    ……ブラック企業のパターンを分類分けして説明。

 3章は、これから社会に出る学生、あるいは現在働いている社会人にとって、是非とも知っておきたい内容となっている。「残業代の未払い」「入社後の選別」「パワハラ」「労働基準の違反」といった問題について、何が悪いのか、どうして悪いのかを簡潔にまとめてある。3章の内容から、残業代と時間外労働の問題点を取り上げ、以下で説明していきます。

 

ブラック企業の残業代のごまかし方

  • 「固定残業代」「定額残業代」……基本給にあらかじめ残業代を含ませる

    一見すると基本給が高くなるが、実際に働いてみると残業だらけな上、残業代が上乗せされないというもの。しかも、「最低賃金を上回って」いて、「超過分を追加で支給」などの要件を満たせば違法ではないということで、働く側にとっては注意すべき点となっている。

  • 「みなし残業」……「営業手当」などといった名目で一定金額を支給する代わり、残業代は支払わない

    法律上の要件を満たしていないものがほとんどで、雇用者側の言い逃れでしかないのが実態となっている。

  • 「管理監督者」「個人請負」……社員を契約によって労働者から外し、残業代の支払いを逃れる。

    「管理監督者」は店長や営業所の管理者を無理やり経営者と同格程度とする方法
    で、残業代の支払いを免れる。個人請負の場合は、労働者を事業主として契約する方法。つまり、労働者を個人事業主(自営業者)扱いにし、労働法から逃れるというもの。

 

過剰な時間外労働を可能にする労働基準法36協定

 時間外労働についての問題点は、労働基準法36条に定められている「36協定」がある。

  • 【労働基準法・労働時間の上限】1日8時間、週40時間
  • 【36協定】労使協定により時間外労働を認める
    • 時間外労働は月45時間まで
    • 特別条項により月60時間まで延長可能
    • 法的拘束力が無いので、過労死ライン(月80時間以上の残業)を超えた労働も可能になってしまう

 参考:「労働時間・休日」「時間外労働の限度に関する基準」(厚生労働省HP)/「過労死ライン」(wikipedia)

 

 

第7章 ブラック企業増加の背景にある、日本型雇用とその歴史

  • 【日本型雇用の特徴】

    終身雇用・年功序列による手厚い雇用の保証をする一方で、企業は絶対的な命令権限(転勤、長時間労働、広範な仕事内容など)を持つ

  • 【日本型雇用の歴史】

    雇用の保証と絶対的な人事権がセットになった日本型雇用は、戦後の労使紛争の中で形成されたもの。
    当時は景気が非常に不安定であり、ストライキや暴力を伴う労働運動が活発に行われていた。そこで、雇用の保証を前提にした日本型雇用が形成された。
    (参考:日本の労働運動史)

 

  • 【ブラック企業増加の背景】

 日本型雇用はあくまで特殊なものであり、セットでなければ成り立たない。しかし、90年代末から2000年代にかけて非正規雇用が増加するなど、日本型雇用が徐々に崩壊し始めた。一方で、絶対的な命令権限な半ば常識的なものとして残り続けた。その結果、雇用の保証をしないのに、絶対的な命令権限だけ持っているという、いわゆるブラック企業が増えてきた。
(参考:
非正規雇用 – Wikipedia
非正規雇用労働者が増加した原因は不況以外に何が挙げられますか? – Yahoo!知恵袋」)

 

  • 【中小・新興企業と大企業】

 戦後に日本型雇用を生み出したことで、労使紛争は落ち着いていった。そのために、企業の労働組合の力は低下。そこに来て、近年は非正規雇用の利用が進んできた。

 IT系に代表される新興企業、あるいは中小企業では日本型雇用は守れるはずもなく、日本の雇用の常識として命令権限だけを行使している。また、大企業は正社員の雇用の保証をするために、大量の非正規雇用を生み出す結果となった。

 

解説

1983年、宮城県生まれ。NPO法人POSSE代表。一橋大学大学院社会学研究科博士課程在籍(社会政策、労働社会学)。日本学術振興会特別研究員。 2006年、中央大学法学部在籍中に、都内の大学生・若手社会人を中心にNPO法人POSSEを設立。年間数百件の労働相談を受けている

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)』より

 

  • 著者はNPO法人「POSSE」の代表理事を務める。
  • 労働基準法については、厚生労働省のHPがわかりやすいです。

 

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