プロ野球の球団経営と収入源[売上費用,フランチャイズ,球場経営,MLB]

2018年1月20日

球団経営の基本がこれでわかる!

もくじ

<球団経営の基本>New!
  • 球団経営における売上と費用
  • 横浜DeNAベイスターズの経営改革
    • 数字で見るベイスターズの経営改革
    • 多種多様なチケット販売
    • オリジナリティのあるグッズ販売
  • 球団経営の費用は人件費が大きい! 
    • コスパ最高な日本ハムファイターズ
  • 球団経営のポイントまとめ 
<球団経営の基本は「フランチャイズ」>
  • フランチャイズとは?
    • フランチャイズの歴史
    • フランチャイズの利点・欠点
    • 子供のうちから「野球観戦は楽しい」と教え込む
  • ボールパークはフランチャイズの完成形
    • ボールパークの一例
    • ボールパークのメリット
  • 日本のスポーツ界におけるフランチャイズ
    • Jリーグとプロ野球
    • パ・リーグが見せたリーグ改革
<球団と球場の経営一本化>
  • 球場をつくるには莫大な費用がかかる
  • パリーグでの球団経営改革
  • DeNAと横浜スタジアムの取り組み
<MLB球団の収入源>
  • 国内外のファン・メディア・スポンサーが顧客のMLB
  • 球団が管理する収益源
  • MLBコミッショナーが管理する収益源
  • まだまだ一枚岩ではない日本のプロ野球
参考書籍

球団経営の基本

球団経営の売上と費用

 まずは球団における収入と支出を見る上で、売上・費用をざっくり見てみましょう(参考文献pp.70-71,97)。

球団の主な売上構成
  • チケット収入(シーズンシート含む)※売上全体の30~50%
  • グッズ収入
  • スポンサー収入
    • ユニフォーム等へのロゴ
    • 広告看板
    • 協賛試合
    • イベント協賛
  • 放映権収入
    • CS、BS
    • 地上波(全国ネット,地方局)
    • インターネット
球団の主な費用
  • 人件費(選手年俸等)
  • キャンプ・遠征費
  • 商品・サービスの費用

 これらの売上と費用のバランスをとって、最終的にプラスになれば球団経営は成功!というわけです。実際にはそれほど単純ではなく、例えば球場の運営権を持っていない場合は、チケット代やグッズ収入の一部を球場へ支払うということもあります。また、球団が赤字の場合でも、オーナー企業が「広告費」として赤字分を補填することもあります。

 その辺はまた別の項で話すとして、実際にどういった経営をしているのか? 横浜ベイスターズを例に紹介して行こうと思います。

横浜DeNAベイスターズの経営改革
チケット収入・グッズ売上に注目

数字で見るベイスターズの経営改革

  • 観客動員数:約100万人⇒約200万人
  • 座席稼働率:約50%⇒90%以上
  • 満員試合数:5試合⇒54試合
  • ファンクラブ会員数:約7.5万人(10倍以上)
  • グッズ売上:3億⇒20億以上
  • 売上:約50億⇒100億以上
  • 利益:▲24億⇒△5億

引用元:『スポーツビジネスの教科書 常識の超え方』池田純(2017)文藝春秋,第1刷,pp19-20(一部数字の表記を省略)

 ベイスターズは5年の間に驚くべき経営改革を実現し、球団の黒字化に成功しました。これには引用文献の著者で2016年までの球団社長でもある池田純氏の功績があります。池田氏が注目したのは、チケット収入とグッズ収入。横浜でのフランチャイズ化やチームのモチベーションアップで基本となるのは、何よりお客さんに球場に来てもらうこと。そこで、まずは様々な工夫をしてチケット収入を増加させていきます。

 次に注目したのは、グッズ収入です。これは球団にとって管理がしやすく、アイディアや目的に応じた商品展開ができる。加えて、他球団も含めてあまり力を入れていないため、伸びしろが多いというメリットもあります。(参考文献p.85)

多種多様なチケット販売
チケット収入アップの方法

チケット収入向上(参考文献pp.71-80)
  • 「子供向け」の無料券配布
  • 730チケット(19時半以降入場の格安チケット)
  • 自社チケット販売サイトの最適化
  • プレミアムイベントの利用

 これらのうち子供向け無料チケットを説明しましょう。子供は将来の顧客になりえるため、その地域での長期的な顧客の獲得につながります。加えて、同伴する保護者の分のチケット収入が得られます。この他様々な形態でチケット販売をし、チケット収入向上のためのアイディアも様々なものを実施しています。

 その上で、ベイスターズは球場内でのイベント、飲食施設を含めた球場内外でのレジャーなどに力を入れ、「一度球場に来ればまた来たくなる」という環境を作り出し、経営面で大成功を収め、チームの人気も向上しました。

オリジナリティのあるグッズ販売

(参考文献pp.87-97)

グッズ販売の工夫
  • 球団による商品の企画開発
  • 球場に来る度に新たなグッズと出会える

 商品の企画開発は、在庫を抱えるなどのリスクがあるために、専門の業者に頼む球団も少なくないです。しかし、よりファンを楽しませるためのグッズをつくるために、ベイスターズは球団での企画開発に乗り出します。これには利益率が高いというメリットもあります。

 具体的には「普段使いのできるグッズ」の開発、過去の球団マスコットや引退したスター選手の関連グッズ開発など。前者はアメリカのニューヨーク・ヤンキースなどがいい例です。チームのロゴが入ったグッズを有名ブランドなどにデザインさせ、ファッションとして世界中で流通しています。顧客を野球ファンだけに限定しないというわけです。

球団経営の費用は人件費が大きい!

 球団経営の費用面を見ると、選手年俸がやはり大きな割合を占めています。売上と費用で球団経営を考えれば、費用を押さえて売上を上げれば成功です。しかし、球団経営をする上ではチームの順位が重要なファクターとなります。

 極論を言えばとことんまで年俸を切り詰めればチームが弱くても球団経営は黒字にできる。しかし、それではチームの人気が落ちて長期的にみると赤字になる可能性が出てくる。つまり、純粋な経営とチームの運営のバランスを取る必要が出るわけです。

コスパ最高な日本ハムファイターズ

 では理想形は何か? 低い年俸でも勝てるチームをつくることです。この辺で、セイバーメトリクスやマネーボールと言った話が出てきます。データを駆使して効率よくチームを強化する。その流れは日本のプロ野球にも来ており、すでにいくつかのチームは成功を収めています。その中でも有名なのは日本ハムファイターズ。年俸交渉が辛口であり、選手との間で交渉が難航するとスター選手でもばっさり切り捨てる。一方で、毎年のように若手選手が登場し、総年俸が低くても常勝軍団をつくりあげています。

 これにはIT技術を駆使した独自の「BOS(ベースボールオペレーションシステム)」という情報管理システムが役立っています。試合分析、選手査定、ドラフト、各球団分析といったあらゆるデータを統括し、無駄のないチーム運営を行っています。この辺の話は別記事にまとめてあるので、参考までに。

球団経営のポイントまとめ

 さて、ここまでの話をかなり単純にまとめてみましょう。

球団経営のポイントまとめ
  • 売上を向上させる
  • 費用(人件費)を抑える
  • 球団経営(売上と費用)とチーム運営のバランスを取る
  • IT技術を駆使して効率よくチームを強化する

 アホみたいに単純化しましたが、つまりはこういうことです。しかし、前述した通り球団経営はそう簡単にはいきません。球場の運営権が無いためにグッズを管理できず、チケット収入も一部しか得られない場合。あるいは、オーナー企業が赤字を補填してくれるために、それにあぐらをかく球団もありますし、オーナー企業の力が大きくて自由な球団経営ができない場合もあります。その辺の細々とした話を含めて、球団経営のトピックを以降で説明していきます。

球団経営の基本は「フランチャイズ」

フランチャイズとは?

フランチャイズの歴史

 フランチャイズという言葉は、 日本では飲食店などの営業形態、スポーツ界ではJリーグが誕生してからよく聞かれるようになりました。そこで、まずはフランチャイズの歴史について見ていきます。

フランチャイズの歴史
  • 1876年 ナショナル・リーグ(世界初のプロスポーツリーグ)創設時に導入。
  • 1940年 マクドナルド創業
  • 1952年 ケンタッキーフライドチキン創業

 驚くべきことに、フランチャイズという考えや経営方式は、フランチャイズ営業で有名なママクドナルドやケンタッキーフライドチキンのはるか前に、スポーツ界で導入されていたというわけです。

フランチャイズの利点・欠点

 フランチャイズは飲食店とスポーツとでは多少事情が異なりますが、簡単にいえば地域営業権であり、各地域で、一人の売り手が多数の顧客に対して営業を行える権利(売り手市場)となっています。とりわけ地域に1チームという形態のスポーツ史上では、その性質がかなり強くなります。

 アメリカは広い国土と数多くの大都市を有しており、フランチャイズがしやすい環境と言えます。MLB(メジャーリーグ)も各地に30のチームがありますし、ニューヨークを本拠地とするヤンキースとメッツは、ホームの試合日をずらすなど徹底されています。

フランチャイズの利点
  • 地域営業権=各地域での(ほぼ)独占的な営業権
  • 売り手市場での営業権

 フランチャイズによってある地域で人気と信頼を得れば、安定した収益を上げることができます。しかし、フランチャイズには欠点があります。ちょっと考えればわかることですが、顧客が地域の住民だけに限定されることです。全国で同じ店舗と商品を並べるチェーンの飲食店などではそれほど影響を受けないでしょうが、球団経営では大きな問題となります。

フランチャイズの欠点
  • 顧客が地域の住民だけに限定される
  • 長期間に渡って人気と信頼が求められる

 そこでMLB(メジャーリーグ)では、地元のファンを逃さない努力をしています。具体的な例をあげれば、将来のファンへの投資があります。言い換えれば、地域の子供に楽しんでもらうということです。

子供のうちから「野球観戦は楽しい」と教え込む

 フランチャイズ経営においては、長期的な視野が必要になります。言い換えれば、地元の人たちに長期に渡って愛される必要があります。そこで、子供のうちから野球は楽しい、球場は楽しいということを教えてあげれば、長期的な顧客を獲得することができるのです。

 MLBはファンサービスが重視されていることで知られていますが、とりわけ子供を大切にする点があります。子供が遊べる遊具を揃えたスペースを作ったり、子供向けのイベントを行ったり、あるいは子供は必ず親と一緒にくるので、家族みんなで楽しめる工夫をしているのです。

ボールパークはフランチャイズの完成形

 最近は日本でもボールパーク構想を打ち出す球団が出てきました。

ボールパークとは

 野球観戦をするだけの「野球場」ではなく、スタジアム周辺、隣接する公園や娯楽施設、ひいてはスタジアムのある街の一角などスタジアムの周辺環境も含めた、より広い意味合いをもった概念

引用元『スポーツビジネスの教科書 常識の超え方』池田純(2017)第一刷,文藝春秋,p.130

 フランチャイズのためには地域の人々からの長期的な人気と信頼が必要になる。そのためには、子どもを含めて地域の人々に家族単位で楽しみを提供する必要があります。そうなると、ボールパークという概念が重要になってきます。ここでボールパークのサービスの一例を、楽天イーグルスを例にいくつかあげます。

ボールパークの一例

ボールパークのサービスの一例

 Koboパーク宮城には、観覧車やメリーゴーランド、オープンテラスカフェ、バーベキュー施設などを備えたスマイルグリコパークというのがあります。ここは数百円の入場料で利用でき、子連れの主婦や仕事帰りのサラリーマン、大学生などが飲食を楽しめるようになっています。パーク内からの観戦も可能です。

 その他、客席も多様化しており、椅子とテーブルつきのボックスシート、人工芝のお座敷シートなどがあり、飲み放題のサービスが利用できるなど野球観戦を様々な形態で楽しめるようになっています。

ボールパークのメリット

 これらはボールパークとしてはかなり基本的なものですが、一つ大きな意味をもっています。それは、球場およびその周辺地域を、野球観戦だけでなく総合的な「レジャー」として楽しめるようにするというもの。平日の子育てをする主婦も、仕事帰りのサラリーマンも、学校帰りの大学生も、ボールパークにとっての顧客になります。野球観戦を主な目的としない人も、球場で飲食やレジャーを楽しめるようになっています。

 その地域の人にとって気軽に利用できるボールパークは、レジャーの選択肢の一つになり、地域の人々の生活に密着した施設になります。これこそ、長期的に顧客を獲得するというフランチャイズの目的に即した球場形態と言えます。

ボールパークのメリット
  • 顧客の幅を広げることができる
  • 地域の人々の生活に密着した施設となる
  • 長期的な視野での顧客獲得に貢献

日本のスポーツ界におけるフランチャイズ

Jリーグとプロ野球

 日本では1993年に誕生したJリーグがフランチャイズ営業を成功させています。Jリーグは90年代になって始まった非常に若いスポーツリーグです。そのために、プロ野球とは違ってしがらみが無く、自由なスポーツリーグ経営をすることができました。そこで、スポーツリーグを経営面やファンサービスという点から考え、フランチャイズや健全なリーグ経営を行うことに成功したのです。

 一方、プロ野球は歴史が長く、1936年に日本初のスポーツリーグ「日本野球連盟 (プロ野球)」として誕生しました。プロ野球は発足から間もなくフランチャイズ制を採用したものの、経営面でしっかりと機能していたかどうかは疑問です。と言うのも、例えば昭和の時代のプロ野球では、セリーグが中心で、その中でも読売巨人軍が球界の盟主となっていました。テレビ中継は巨人戦中心、昭和の終わりごろになっても、球団の無い地域では巨人戦しか中継しないというのが当たり前でした。

 もちろん、阪神タイガースや広島カープなど、地方で圧倒的な人気を獲得する球団はありました。しかし、集客面でジャイアンツ頼りだったり、オーナー企業にとって球団経営は赤字が当たり前で、「球団の赤字はオーナー企業の広告費」と考えられることが多く、本来のフランチャイズの機能を果たしていたとは言えない状況でした。

パ・リーグが見せたリーグ改革

 フランチャイズは地方における売り手市場と言いましたが、プロ野球界では「セ・リーグの売り手市場」「読売巨人軍の売り手市場」だったわけです。しかし、2004年のリーグ再編問題の前後で、パ・リーグが大きな改革を見せ始めます。

 2003年にロッテの監督に就任したボビー・バレンタイン、2004年に本拠地を北海道に移転したファイターズのトレイ・ヒルマン、さらには2005年にオーナー企業が変わったソフトバンク・ホークス、新規に創設された楽天・イーグルスなどがその象徴です。MLB流の球団のあり方を外国人監督が取り入れ、IT企業が新たに球団のオーナーになります。これらの監督や球団に特徴的だったのは、地元を大切にすることと、球団経営に真剣に取り組んだ点です。

 パリーグは存続の危機を乗り越え、まさにピンチをチャンスに変えて、今ではパ・リーグの時代と言わしめるほどの成功を手にしました。ファイターズ(北海道)、ホークス(九州)、イーグルス(東北)とフランチャイズ化に成功し、オーナー企業に依存しない黒字経営を目指しています。

 この波は、徐々にですがセ・リーグにも押し寄せています。とりわけ目立つのはDeNAベイスターズの存在です。かつては球場へのアクセスの悪さや、ファンの通勤圏が東京であるなど問題を抱えていましたが、オーナー企業を含めた積極的な活動により、今では首都圏でありながらフランチャイズが根付いています。また、球場と球団の経営を一本化する等、経営健全化にも積極的に動いています。ベイスターズもまた、オーナーはIT企業のDeNAです。ITは新興産業であり、企業そのものや経営陣も比較的若いです。そのため、旧来の球団経営に捉われず、新たな取り組みを行うことができるのです。

 ここまでの話を踏まえて、フランチャイズ、球団の経営、収入源について、MLBとの比較などをしながら見ていきましょう。

パ・リーグがプロ野球を変える

スポーツビジネスの教科書 常識の超え方

日本ハムファイターズのチーム戦略

球団と球場の経営一本化

球場をつくるには莫大な費用がかかる

 フランチャイズを考える上で欠かせないのが、球場の営業権です。球団の収入の中でも、球場内でのチケット販売や物品販売は大きな割合を占めています。しかし、球団と球場の経営者が異なり、収益を奪い合うという問題があります。これでは球団経営は難しいですし、フランチャイズの利点も生かすことができません。では、どうして球団と球場の経営者が異なるのでしょうか?

 理由の一つに、球団が自前で球場をつくるにはかなりの費用がかかることがあります。球場別に見ていくと、神宮球場などの野外球場ならば200億、ドームならば400億、個別の球場をあげればヤフードームが何と800億弱、大阪ドームも700億という莫大な費用がかかっています。これに比べて、球団の売り上げの平均は100億ほどであり、球団にとってはあまりに高い費用なのです。

パリーグでの球団経営改革
営業権の獲得、指定管理者制度、球団建設

 球団の黒字経営にとって球場から出る利益は欠かせないもの。そこで、パ・リーグは様々な方法で球場経営の問題に取り組み、現在では多くの球団が経営の一本化に成功しています。例えば、イーグルスは県営球場を自費で改修して営業権を獲得マリーンズは指定管理者(公共施設の運営代行)になっています。また、ホークスなどオーナー企業に資金力があるところは球場を親会社が建設しています。残りの球団のうち、西武とオリックスは自前の球場です。親会社の西武グループとオリックスは日本では名だたる大企業。まさにお金の為せる業でしょう。

 さて、ここでもまたセリーグは一歩で遅れていますが、DeNAベイスターズは2017年現在、球場の経営権を取得し、将来に向けて改築工事も予定しています。元々横浜球場は市が所有するものであり、運営管理は第三セクターの(株)横浜スタジアムが行っていました。その頃は、球団は年8億円もの使用料を支払う上に、入場料の1/4、さらには売店での売り上げ、広告収入に至っても球場に入ってしまうという状況でした。

参考:

 そんな中、2012年にDeNAが親会社になり、球団の経営改革に乗り出します。2015年から2016年にかけて、球団を通じて(株)横浜スタジアムの株式の取得を進め、友好的な形で運営権を獲得。親会社のDeNAによる、球団と球場の一体運営を実現させました。これによって収益が大幅に上がることは間違いありません。

DeNAと横浜スタジアムの取り組み

 球場の運営権を取得することは、他にもメリットがあります。横浜スタジアムを例に上げると、2020年のオリンピック会場に選ばれたのでもわかるように、プロ野球以外でも球場を利用して収益を上げることができます。シーズンオフや試合のない日にスポーツ大会を行ったり、市のイベント会場として使う方法です。

 横浜スタジアムはフランチャイズの利点を存分に生かし、市と連携してのスポーツ事業に積極的に取り組んでいます。2020年に向けてスタジアムは改築工事に入ります。シーズンオフを利用し、2017年から2020年の2年がかりの大工事です。目的は球場の客席数増加やバリアフリー化で、より多くの人に利用してもらえるようにとのこと。これらの改革は、他の球団も参考にしてほしい、素晴らしい例だと思います。

MLB球団の収入源

国内外のファン・メディア・スポンサーが顧客のMLB

 さて、今度は球団の収入源について見ていきましょう。球団経営を厳密に管理しているMLBの例を見ると非常にわかりやすいです。まず注目すべきは、MLBにおいては、地域単位のフランチャイズに留まらず、メディアによる全国・世界単位の収入、さらにチームの知名度をあげて、国内外からスポンサーを獲得するといった、流れができあがっていることです。そうなると、顧客も地域のファンだけでなく、全国規模(全国のファン・メディア)・世界規模(世界中のファン、他国のメディア)、国内外のスポンサー企業と、かなり幅広いものになります。

球団が管理する収益源

 MLBでは球団が管理する収益源と、MLBコミッショナー(マイナー含む全球団のCEO)が管理する収益源があります。その狙いとして収益・戦力の均等化がありますが、その辺は後で説明します。まずは球団管理の収益源です。

1.チケット販売
2.物品販売(看板販売、命名権含む)

 これらはまさに「フランチャイズ」による収益。まずは地域でのフランチャイズを目指し、長期に渡って安定して観客を獲得し、地域単位での収入を得ます。ここでの顧客は地域(フランチャイズ)となります。

MLBコミッショナーが管理する収益源

 MLBでは、コミッショナーが中心となってMLB全体の放映権の管理を行い、そこで得た収益を各球団に配分していきます。この点に関して、MLBでは法律をつくっているほどです。なぜ収益を配分するかと言えば、戦力の均等化に他なりません。戦力が均等化すれば、お金の無い球団でも戦力を整えることができ、優勝争いが毎年盛り上がります。するとMLB全体が盛り上がり、スポーツリーグとしての基盤が強くなります。では、収益源について一つずつ見ていきましょう。

3.放映権

 フランチャイズで地域の顧客を獲得したら、今度はテレビやネットなどのメディアに向けて放映権を販売していきます。これによって、全国規模・世界単位で収入を得ることができます。この場合、顧客は全国・世界になります。

 メジャーリーグだからこそできる芸当ですが、プロ野球でもアジアという巨大なマーケットがあります。韓国、台湾、中国、フィリピンなどといった野球が盛んな国は非常に多いですし、国内の選手がプロ野球で活躍しており、国内で中継をしている国もあり大人気です。NPBがこの収益源の獲得に本気で乗り出せば、メリットは非常に多いでしょう。

4.マーチャタイジング(ユニフォームの販売等)
5.スポンサーシップ

 ユニフォームの販売とスポンサーシップは別物に思えますが、収益を上げる仕組みには関連性があります。良い例として、例えば日本ではスペインのリーガ・エスパニョーラ所属、バルセロナのユニフォームが人気があります。加えて、日本のIT企業の楽天はバルセロナのスポンサーになり、ユニフォームに社名を載せています。

 つまり、世界規模のメディアを通じてチームの認知度が上がれば、スポンサー企業を得て大きな収入を得ることができ、さらにユニフォームの売り上げ等も見込めるわけです。ユニフォームの利用法としては、テレビ番組でプレゼント企画を使って、商品キャンペーンをすることも考えられます。インターネットや有料放送の時代に合った、メディアと関連性の深い収益源というわけです。

まだまだ一枚岩ではない日本のプロ野球

 MLBと比較すれば、日本のプロ野球では一部利益の分配は行われているようですが、MLBほどの厳格なルールはありません。当然ながら、利益を分配し戦力均衡化を進めようと言う法律もありません。

 戦力均衡化についてもっと大きな問題は、強豪球団によるリーグの支配です。現在は事情が変わってきましたが、放映権収入はジャイアンツ頼りでしたし、ドラフト制度における裏金問題や選手の強奪などが当然のように行われてきました。裏での取引は今でも間違いなく存在するでしょう。そして、資金力のない球団は弱体化していき、いつまでたってもフランチャイズが根付かない、などといった問題があるというわけです。

 ただし、近年はパリーグの改革によりフランチャイズが根付き、ネットや有料放送を通じて好きな球団の中継を見ることもできます。こうなると、強豪球団によるリーグの支配の構図は崩れてきます。しかし、日本のプロ野球の最大の問題は、両リーグ含めた全球団のまとまりでしょう。プロ野球界の構造を変えようと言う動きはあるものの、実現に至るまではまだまだ時間がかかりそうです。とりあえずはパ・リーグと、そしてセ・リーグのまさに「希望の星」であるDeNAベイスターズの今後に期待したいところです。