MLB・プロ野球の球団経営と収入源比較[フランチャイズ,球団経営]

2017年11月3日

パ・リーグがプロ野球を変える

 MLB・プロ野球の球団経営と収入源比較 – もくじ

  • スポーツリーグのフランチャイズについて
    • フランチャイズの歴史と基礎知識
    • フランチャイズの利点・欠点
    • 子供のうちから「野球観戦は楽しい」と教え込む
    • 日本のプロスポーツ、プロ野球でのフランチャイズ
    • パ・リーグが見せたリーグ改革
  • 球団と球場の経営一本化
    • 球場をつくるには莫大な費用がかかる
    • パリーグでの球団経営改革
    • DeNAと横浜スタジアムの取り組み
  • 球団の収入源
    • 国内外のファン・メディア・スポンサーが顧客のMLB
    • 球団が管理する収益源
    • MLBコミッショナーが管理する収益源
    • まだまだ一枚岩ではない日本のプロ野球

参考書籍:
パ・リーグがプロ野球を変える 6球団に学ぶ経営戦略 (朝日新書)

スポーツリーグのフランチャイズについて

フランチャイズの歴史と基礎知識

 フランチャイズという言葉は、 日本では飲食店などの営業形態、スポーツ界ではJリーグが誕生してからよく聞かれるようになりました。そこで、まずはフランチャイズの歴史について見ていきます。

  • 1876年 ナショナル・リーグ(世界初のプロスポーツリーグ)創設時に導入。
  • 1940年 マクドナルド創業
  • 1952年 ケンタッキーフライドチキン創業

 驚くべきことに、フランチャイズという考えや経営方式は、フランチャイズ営業で有名なママクドナルドやケンタッキーフライドチキンのはるか前に、スポーツ界で導入されていたというわけです。フランチャイズについては、飲食店とスポーツとではイメージが違うかと思いますが、簡単にいえば地域営業権であり、各地域で、一人の売り手が多数の顧客に対して営業を行える権利(売り手市場)となっています。

 アメリカは広い国土と数多くの大都市を有しており、フランチャイズがしやすい環境と言えます。MLB(メジャーリーグ)も各地に30のチームがありますし、ニューヨークを本拠地とするヤンキースとメッツは、ホームの試合日をずらすなど徹底されています。

フランチャイズの利点・欠点

 そういうわけで、フランチャイズは「地域営業権・売り手市場」という大きなメリットを持っています。ある地域で人気と信頼を得れば、安定した収益を上げることができます。

 一方で、フランチャイズには欠点があります。ちょっと考えればわかることですが、顧客が地域の住民だけに限定されることです。全国で同じ店舗と商品を並べるチェーンの飲食店などではそれほど影響を受けないでしょうが、球団経営では大きな問題となります。そこでMLB(メジャーリーグ)では、地元のファンを逃さない努力をしています。具体的な例をあげれば、将来のファンへの投資があります。言い換えれば、地域の子供に楽しんでもらうということです。

子供のうちから「野球観戦は楽しい」と教え込む

 フランチャイズ経営においては、長期的な視野が必要になります。言い換えれば、地元の人たちに長期に渡って愛される必要があります。そこで、子供のうちから野球は楽しい、球場は楽しいということを教えてあげれば、長期的な顧客を獲得することができるのです。

 MLB(メジャーリーグ)はファンサービスが重視されていることで知られていますが、とりわけ子供を大切にする点があります。子供が遊べる遊具を揃えたスペースを作ったり、子供向けのイベントを行ったり、あるいは子供は必ず親と一緒にくるので、家族みんなで楽しめる工夫をしているのです。

日本のプロスポーツ、プロ野球でのフランチャイズ

 日本では1993年に誕生したJリーグがフランチャイズ営業を成功させています。Jリーグは90年代になって始まった非常に若いスポーツリーグです。そのために、プロ野球とは違ってしがらみが無く、自由なスポーツリーグ経営をすることができました。そこで、スポーツリーグを経営面やファンサービスという点から考え、フランチャイズや健全なリーグ経営を行うことに成功したのです。

 一方、プロ野球は歴史が長く、1936年に日本初のスポーツリーグ「日本野球連盟 (プロ野球)」として誕生しました。プロ野球は発足から間もなくフランチャイズ制を採用したものの、経営面でしっかりと機能していたかどうかは疑問です。と言うのも、例えば昭和の時代のプロ野球では、セリーグが中心で、その中でも読売巨人軍が球界の盟主となっていました。テレビ中継は巨人戦中心、昭和の終わりごろになっても、球団の無い地域では巨人戦しか中継しないというのが当たり前でした。

 もちろん、阪神タイガースや広島カープなど、地方で圧倒的な人気を獲得する球団はありました。しかし、集客面でジャイアンツ頼りだったり、オーナー企業にとって球団経営は赤字が当たり前で、「球団の赤字はオーナー企業の広告費」と考えられることが多く、本来のフランチャイズの機能を果たしていたとは言えない状況でした。

パ・リーグが見せたリーグ改革

 フランチャイズは地方における売り手市場と言いましたが、プロ野球界では「セ・リーグの売り手市場」「読売巨人軍の売り手市場」だったわけです。しかし、2004年のリーグ再編問題の前後で、パ・リーグが大きな改革を見せ始めます。

 2003年にロッテの監督に就任したボビー・バレンタイン、2004年に本拠地を北海道に移転したファイターズのトレイ・ヒルマン、さらには2005年にオーナー企業が変わったソフトバンク・ホークス、新規に創設された楽天・イーグルスなどがその象徴です。MLB流の球団のあり方を外国人監督が取り入れ、IT企業が新たに球団のオーナーになります。これらの監督や球団に特徴的だったのは、地元を大切にすることと、球団経営に真剣に取り組んだ点です。

 パリーグは存続の危機を乗り越え、まさにピンチをチャンスに変えて、今ではパ・リーグの時代と言わしめるほどの成功を手にしました。ファイターズ(北海道)、ホークス(九州)、イーグルス(東北)とフランチャイズ化に成功し、オーナー企業に依存しない黒字経営を目指しています。

 この波は、徐々にですがセ・リーグにも押し寄せています。とりわけ目立つのはDeNAベイスターズの存在です。かつては球場へのアクセスの悪さや、ファンの通勤圏が東京であるなど問題を抱えていましたが、オーナー企業を含めた積極的な活動により、今では首都圏でありながらフランチャイズが根付いています。また、球場と球団の経営を一本化する等、経営健全化にも積極的に動いています。ベイスターズもまた、オーナーはIT企業のDeNAです。ITは新興産業であり、企業そのものや経営陣も比較的若いです。そのため、旧来の球団経営に捉われず、新たな取り組みを行うことができるのです。

 ここまでの話を踏まえて、フランチャイズ、球団の経営、収入源について、MLBとの比較などをしながら見ていきましょう。

球団と球場の経営一本化

球場をつくるには莫大な費用がかかる

 フランチャイズを考える上で欠かせないのが、球場の営業権です。球団の収入の中でも、球場内でのチケット販売や物品販売は大きな割合を占めています。しかし、球団と球場の経営者が異なり、収益を奪い合うという問題があります。これでは球団経営は難しいですし、フランチャイズの利点も生かすことができません。では、どうして球団と球場の経営者が異なるのでしょうか?

 理由の一つに、球団が自前で球場をつくるにはかなりの費用がかかることがあります。球場別に見ていくと、神宮球場などの野外球場ならば200億、ドームならば400億、個別の球場をあげればヤフードームが何と800億弱、大阪ドームも700億という莫大な費用がかかっています。これに比べて、球団の売り上げの平均は100億ほどであり、球団にとってはあまりに高い費用なのです。

パリーグでの球団経営改革
営業権の獲得、指定管理者制度、球団建設

 球団の黒字経営にとって球場から出る利益は欠かせないもの。そこで、パ・リーグは様々な方法で球場経営の問題に取り組み、現在では多くの球団が経営の一本化に成功しています。例えば、イーグルスは県営球場を自費で改修して営業権を獲得マリーンズは指定管理者(公共施設の運営代行)になっています。また、ホークスなどオーナー企業に資金力があるところは球場を親会社が建設しています。残りの球団のうち、西武とオリックスは自前の球場です。親会社の西武グループとオリックスは日本では名だたる大企業。まさにお金の為せる業でしょう。

 さて、ここでもまたセリーグは一歩で遅れていますが、DeNAベイスターズは2017年現在、球場の経営権を取得し、将来に向けて改築工事も予定しています。元々横浜球場は市が所有するものであり、運営管理は第三セクターの(株)横浜スタジアムが行っていました。その頃は、球団は年8億円もの使用料を支払う上に、入場料の1/4、さらには売店での売り上げ、広告収入に至っても球場に入ってしまうという状況でした。

参考:

 そんな中、2012年にDeNAが親会社になり、球団の経営改革に乗り出します。2015年から2016年にかけて、球団を通じて(株)横浜スタジアムの株式の取得を進め、友好的な形で運営権を獲得。親会社のDeNAによる、球団と球場の一体運営を実現させました。これによって収益が大幅に上がることは間違いありません。

DeNAと横浜スタジアムの取り組み

 球場の運営権を取得することは、他にもメリットがあります。横浜スタジアムを例に上げると、2020年のオリンピック会場に選ばれたのでもわかるように、プロ野球以外でも球場を利用して収益を上げることができます。シーズンオフや試合のない日にスポーツ大会を行ったり、市のイベント会場として使う方法です。

 横浜スタジアムはフランチャイズの利点を存分に生かし、市と連携してのスポーツ事業に積極的に取り組んでいます。2020年に向けてスタジアムは改築工事に入ります。シーズンオフを利用し、2017年から2020年の2年がかりの大工事です。目的は球場の客席数増加やバリアフリー化で、より多くの人に利用してもらえるようにとのこと。これらの改革は、他の球団も参考にしてほしい、素晴らしい例だと思います。

球団の収入源

国内外のファン・メディア・スポンサーが顧客のMLB

 さて、今度は球団の収入源について見ていきましょう。球団経営を厳密に管理しているMLBの例を見ると非常にわかりやすいです。まず注目すべきは、MLBにおいては、地域単位のフランチャイズに留まらず、メディアによる全国・世界単位の収入、さらにチームの知名度をあげて、国内外からスポンサーを獲得するといった、流れができあがっていることです。そうなると、顧客も地域のファンだけでなく、全国規模(全国のファン・メディア)・世界規模(世界中のファン、他国のメディア)、国内外のスポンサー企業と、かなり幅広いものになります。

球団が管理する収益源

 MLBでは球団が管理する収益源と、MLBコミッショナー(マイナー含む全球団のCEO)が管理する収益源があります。その狙いとして収益・戦力の均等化がありますが、その辺は後で説明します。まずは球団管理の収益源です。

1.チケット販売
2.物品販売(看板販売、命名権含む)

 これらはまさに「フランチャイズ」による収益。まずは地域でのフランチャイズを目指し、長期に渡って安定して観客を獲得し、地域単位での収入を得ます。ここでの顧客は地域(フランチャイズ)となります。

MLBコミッショナーが管理する収益源

 MLBでは、コミッショナーが中心となってMLB全体の放映権の管理を行い、そこで得た収益を各球団に配分していきます。この点に関して、MLBでは法律をつくっているほどです。なぜ収益を配分するかと言えば、戦力の均等化に他なりません。戦力が均等化すれば、お金の無い球団でも戦力を整えることができ、優勝争いが毎年盛り上がります。するとMLB全体が盛り上がり、スポーツリーグとしての基盤が強くなります。では、収益源について一つずつ見ていきましょう。

3.放映権

 フランチャイズで地域の顧客を獲得したら、今度はテレビやネットなどのメディアに向けて放映権を販売していきます。これによって、全国規模・世界単位で収入を得ることができます。この場合、顧客は全国・世界になります。

 メジャーリーグだからこそできる芸当ですが、プロ野球でもアジアという巨大なマーケットがあります。韓国、台湾、中国、フィリピンなどといった野球が盛んな国は非常に多いですし、国内の選手がプロ野球で活躍しており、国内で中継をしている国もあり大人気です。NPBがこの収益源の獲得に本気で乗り出せば、メリットは非常に多いでしょう。

4.マーチャタイジング(ユニフォームの販売等)
5.スポンサーシップ

 ユニフォームの販売とスポンサーシップは別物に思えますが、収益を上げる仕組みには関連性があります。良い例として、例えば日本ではスペインのリーガ・エスパニョーラ所属、バルセロナのユニフォームが人気があります。加えて、日本のIT企業の楽天はバルセロナのスポンサーになり、ユニフォームに社名を載せています。

 つまり、世界規模のメディアを通じてチームの認知度が上がれば、スポンサー企業を得て大きな収入を得ることができ、さらにユニフォームの売り上げ等も見込めるわけです。ユニフォームの利用法としては、テレビ番組でプレゼント企画を使って、商品キャンペーンをすることも考えられます。インターネットや有料放送の時代に合った、メディアと関連性の深い収益源というわけです。

まだまだ一枚岩ではない日本のプロ野球

 MLBと比較すれば、日本のプロ野球では一部利益の分配は行われているようですが、MLBほどの厳格なルールはありません。当然ながら、利益を分配し戦力均衡化を進めようと言う法律もありません。

 戦力均衡化についてもっと大きな問題は、強豪球団によるリーグの支配です。現在は事情が変わってきましたが、放映権収入はジャイアンツ頼りでしたし、ドラフト制度における裏金問題や選手の強奪などが当然のように行われてきました。裏での取引は今でも間違いなく存在するでしょう。そして、資金力のない球団は弱体化していき、いつまでたってもフランチャイズが根付かない、などといった問題があるというわけです。

 ただし、近年はパリーグの改革によりフランチャイズが根付き、ネットや有料放送を通じて好きな球団の中継を見ることもできます。こうなると、強豪球団によるリーグの支配の構図は崩れてきます。しかし、日本のプロ野球の最大の問題は、両リーグ含めた全球団のまとまりでしょう。プロ野球界の構造を変えようと言う動きはあるものの、実現に至るまではまだまだ時間がかかりそうです。とりあえずはパ・リーグと、そしてセ・リーグのまさに「希望の星」であるDeNAベイスターズの今後に期待したいところです。