『浅草キッド』(ビートたけし)のあらすじ・レビュー

エレベーターボーイ、師匠、元相方……
浅草「フランス座」時代、下積み生活を綴った小説タッチの名作自叙伝!!

浅草キッド (新潮文庫)

『浅草キッド』のもくじ

 

内容説明

ある真夏の昼下がり、ランニングにショートパンツ、バーチサンダル姿のひとりの青年が、浅草六 区の街におりたった。それがオイラだった。―昭和47年、大学を中退したたけしは、浅草フランス座に飛び込んで芸人修業を開始した。ダンディな深見師匠、 気のいい踊り子たち、乞食のきよし等愉快な仲間に揉まれながら、自分を発見していくさまを綴る青春自伝エッセイ。

目次

第一章  昭和47年夏、浅草フランス座へ入門した
第二章  憧れの深見千三郎に弟子志顔を直訴した
第三章  初舞台はオカマの役だった
第四章  進行係に昇進。役者のチャンスがやってきた
第五章  志の川亜矢という踊り子が可愛がってくれた
第六章  深見師匠の芝居の迫力にはタジタジだった
第七章  いのうえという作家志望のやつが入ってきた
第八章  深見師匠の芸人ダンディズムが気に入った
第九章  師匠のバクチ好きには泣かされた
第十章  踊り子たちのおおらかさには感動させられた
第十一章 踊り子たちと遊びに行くまではよかった
第十二章 六区名物、乞食のきよしには振りまわされた
第十三章 マーキーと名乗るヘンなやつが入ってきた
第十四章 二郎と組んで漫才デビューすることになった
第十五章 深見千三郎はオイラにとって永遠の師匠となった

資料 浅草フランス座 名作コント

引用元:ビートたけし(1994)『浅草キッド』新潮社,第九刷,pp.4-5

※発行年……単行本:1988年,文庫:1992年

 

『浅草キッド』のあらすじ

 昭和47年(1972年)の夏、浅草 に一人の青年がやってきた。学生運動の時代、大学をサボって新宿のジャズ喫茶などに出入りし、卒業を目前にして大学を中退。目標もあてもない生活をしなが らも、このまま終わってしまっていいのか、夢はないのかと自問自答する日々。そんな青年「北野武」の頭に、ふいにある考えが浮かぶ。

「浅草へ行って芸人になろう」

  演芸ブームが去り、閑散としていた浅草六区。しかし、映画館、演芸場、劇場などがズラリと並ぶ風景は健在だった。松竹演芸場に飛び込むも門前払いを食ら い、次に向かったのは浅草フランス座であった。チケット売り場のおばさんに頼み込み、とりあえずのエレベーターボーイとしての仕事を得る。ここから、芸人 としての人生がスタートした。

 

  毎朝の階段掃除を済ませたら、エレベーターボーイとして夜まで客を上げ下げする。そんな単調な毎日も、有名な俳優や芸人を輩出した「フランス座の一員」に なれたと思うと、気持ちがいいものだった。そんな中、たけしは後に師匠となる座長「深見千三郎」と出会う。年のわりに身なりやファッションに気を使い、品 とのある佇まいと風格を漂わす深見。さっそく弟子入りを志願したたけしに、深見はエレベーターの前でタップダンスを披露する。

「一週間でこれを覚えてこい」

 ここから、深見とたけしによる、エレベーターでのタップの稽古が始まった。

 

  それから数ヶ月して、たけしは空いている楽屋に寝泊まりを始める。まもなく代役ながらも初舞台を踏み、秋には進行係に。ここで舞台の準備や流れを学んでい きつつ、深見から様々なコントを見せてもらい、仕事が終われば今度は「遊び方」を教えられる。こうして、芸人としての基礎を叩き込まれていった。

  作家志望の「いのうえ」との出会い、踊り子の姐さんとの笑いの絶えない日々。たけしは徐々に出番を増やしていき、芸人としての頭角を現す。そんなところに やってきたのが、マーキーという青年だった。照れ屋で神経質な性格と、自分と似た感覚を持つマーキーをたけしは気に入り、一緒にコンビを組んで、フランス 座を「卒業」しようと思いつく。

『浅草キッド』の解説

 ビートたけしさんの著書の中でも、とりわけ知名度が高いのがこの作品。若き日の「北野武」が浅草フランス座へ入門し、ツービートを結成するまでの数年間。演芸場でのエピソードを中心に、小説風にまとめたものとなっています。本人はもちろん、登場する人物はほとんど実在・実名です。小説風にまとめあげた完全な自叙伝という位置づけになります。

 この作品が、たけしさんの著書の中でも重要な理由はいくつかあります。まずひとつは、先程も言ったように、下積み時代に関わった人物が登場する点です。

 

主要な登場人物

  • 深見千三郎:浅草フランス座の座長。東八郎萩本欽一といった数々のスターを世話し、たけしさんの師匠となる人物。
  • 二郎:後にツービートとしてコンビを組むことになる「ビートきよし」さん。フランス座の先輩芸人であった。
  • 井上雅義:

昭和四十七年、明治大学を中退したたけしは浅草のストリップ劇場、フランス座で芸人修業をはじめた。著者の井上雅義は偶然にも同時期にフランス座に座付作家志望で入門し、たけしと三年間寝食をともにする。謎の多い、たけしの浅草修行時代の真実を知る、数少ない証人の一人。名著『浅草キッド』(ビートたけし 著、新潮文庫刊)の出てくる“井上”こそ、本書の著者である。

1948年、千葉県出身。73年、浅草フランス座に座付作家志望で入門。3年間、ビートたけしと寝食をともにする。以後、週刊誌特約記者、フリーランス・ライターを経て現在にいたる

引用元:幸せだったかな ビートたけし伝 (amazon)

 作家志望でフランス座に入門する「いのうえ」という青年が、作中に登場します。たけしさんと共に修行し、毎日のように飲み歩く仲となった人物です。上の引用文にもあるように、彼はその後夢を叶えて作家になり、本書の構成を担当しています。

  • 牧口正樹:

 ツービート結成以前、たけしさんがコンビを組んでいた人物。作中では「マーキー」として登場します(ちなみに、作中に出る彼の名前は、本名であるかどうかは定かではありません)。フランス座を出てコンビとして活動しようとしていた矢先、彼は酒で体を壊してしまいます。仕方なくたけしさんは、先輩の兼子二郎さんとコンビを組み、「ツービート」として世に出ていくのです。

 フランス座を出る直前までコンビを組んでいたこと。さらには、笑いのセンスもたけしさんと似ているところがあったこと。そのために、幻の相方として有名です。

 

芸人ビートたけしの根底にあるもの

 このように、本書には芸人「ビートたけし」の誕生に大きな影響を与えた人物が、実際のエピソードと共に数多く登場します。一方で、世に出る前の関係者ということもあって、彼らの映像やその他資料は残っていません。したがって、本書は作品としての面白さに加えて、資料としての重要度も高いというわけです。

 また、本書の名前「浅草キッド」は、他にもいろいろな使われ方をしています。ご存知たけしさんの弟子であり、人気お笑いコンビの「浅草キッド」。さらには、歌手「ビートたけし」の名曲として知られる「浅草キッド 」も存在します。この歌は、マーキーのことを歌っているとかいないとか。

 

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