「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」のレビュー・感想

2014年8月12日

第三次大戦後の地球を舞台に、人類とアンドロイドの関係を描いた傑作SF小説!

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

 もくじ

あらすじ

 舞台は第三次世界大戦後の地球、人類の多くは火星へ移住したが、放射性物質に侵された地球にも一部の人々が残り生活をしていた。人間以外の生き物が貴重な存在となった地球では、動物を飼うことがステータスとなっていた。
 一方火星では、すべての移住者に一体ずつ、アンドロイドが提供された。現在ではそれは、火星に住む人間にとっての生活必需品となっている。そして、定期的に、アンドロイドは主人を殺し、火星からの逃亡者として地球へやってくる。
 地球に住んでいる主人公は、逃亡してきたアンドロイドを狩るハンターであり、賞金稼ぎである。彼は人工の電気羊しかもっておらず、本物の動物を手に入れるべく、いままさに火星から逃亡してきたアンドロイド集団を狩りに行くこととなった。

 

【参考:ハヤカワ・オンラインでのあらすじ】

第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を持っているかどうかが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しかもっていないリックは、そこで火星 から逃亡した〈奴隷〉アンドロイド八人の首にかかった賞金を狙って、決死の狩りをはじめた! リドリー・スコット監督の名作映画『ブレードランナー』原作

(「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」より)

解説

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  • 原作も映画も評価が高く、SF作品の金字塔となっている。

 

 

考察・感想

【テーマについて】

 あらすじだけ見ると「アンドロイドVS人類」という安っぽいSF作品のようなイメージをもってしまうが、物語そのものは複雑かつ繊細であり、テーマとして「人間性」「人間の存在に対する問いかけ」がある。
 訳者あとがきの一部が、それをよく表している。

「ディック(作者)において、人間とアンドロイドの生物学上の、あるいは自然科学上の区別は、まったく無意味である。親切な存在はすべからく『人間』であり、それ以外は人間ではない。(中略)ディックは、『アンドロイド』と『人間』の形式上の区別には関心がない。コピーも原物も、親切であればすべて本物である。」

(「アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫) 」あとがきより)

 

【アンドロイドと人間について】

 この作品にはいくつもの対比が見られる。アンドロイドを人類と区別する際に、感情の欠如がある。しかし、その一方で人間は、情調オルガンなしには精神をコントロールできない。また、人間にとっての動物とアンドロイドについても、アンドロイドを殺した金で動物を飼い、愛情を注ぎ、本物の動物の代わりとして電気動物を飼うというように、多くの矛盾に満ちている。
 そのような中で、ピンボケと言われるイジドアがいるが、彼はやさしさと優れた感覚能力を持つ。フィル・レッシュの存在も重要だ。彼は無慈悲に、そして迷いなくアンドロイドを殺す。しかし、他の人間と比べれば、彼のやり方はある意味「健全」である