『A Night at the Opera(オペラ座の夜)』QUEEN(クイーン)レビュー[解説,評価,感想]

A Night at the Opera(オペラ座の夜)」(1975年)
キャリア最高傑作!ボヘミアンラプソディ収録!
★★★最高傑作★★★

オペラ座の夜

『A Night at the Opera(オペラ座の夜)』 – もくじ

  • アルバムレビュー・解説
    • ボヘミアン・ラプソディの衝撃とロック・オペラ
    • 収録曲/動画で試聴
  • 各曲解説・感想
    • 1.Death on Two Legs (Dedicated To…) (Mercury)
    • 3.I’m in Love With My Car (Taylor)
    • 4.You’re My Best Friend (Deacon)
    • 5.’39(May)
    • 6.Sweet Lady (May)
    • 7.Seaside Rendezvous (Mercury)
    • 8.The Prophet’s Song (May)
    • 9.ラヴ・オブ・マイ・ライフ(Love of my life)(Mercury)
    • 11.ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody) (Mercury)

アルバムレビュー・解説

ボヘミアン・ラプソディの衝撃とロック・オペラ

 前作『Sheer Heart Attack(シアー・ハート・アタック)』でイギリス・アメリカ両国での支持を得てバンドの音を確立したクイーン。本作制作時には並々ならぬ意欲を見せ、それはアルバムの世界的評価(英米ともにチャート1位獲得)と共に歴史に残る名曲「ボヘミアン・ラプソディ」として結実する。

 本作の特徴はバラエティーあふれる楽曲にある。メインソングライターはフレディブライアン・メイだが、ジョン・ディーコンロジャー・テイラーの楽曲のクオリティも高く、とりわけアルバム前半は4人の楽曲がうまく混ざり合い、アルバムの特徴を決定づけている。また、やはりこのアルバムは「ボヘミアン・ラプソディ」が核であり、他の楽曲の随所にそのフレーズが組み込まれており、コンセプトアルバムの様相を呈している。タイトルである「オペラ座の夜」は20世紀前半に活躍したアメリカのコメディアンマルクス兄弟の映画『オペラは踊る』からきている。演劇形式のひとつである「ヴォードヴィル」、イギリスの伝統的な娯楽施設「ミュージックホール」からの影響が見て取れ(#2,7など)、そこがアルバムにオペラ的要素を付与している。

収録曲/動画で試聴

【収録曲】
  1. Death on Two Legs (Dedicated To…) (Mercury)
  2. Lazing on a Sunday Afternoon (Mercury)
  3. I’m in Love With My Car (Taylor)
  4. マイ・ベスト・フレンド(You’re My Best Friend) (Deacon)
  5. ’39 (May)
  6. Sweet Lady (May)
  7. Seaside Rendezvous (Mercury)
  8. The Prophet’s Song (May)
  9. ラヴ・オブ・マイ・ライフ(Love of my life)(Mercury)
  10. Good Company (May)
  11. ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody) (Mercury)
  12. ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン(God Save the Queen )(Arr. May)
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各曲解説・感想

1.Death on Two Legs (Dedicated To…) (Mercury)

 軽やかなピアノの旋律にブライアン・メイの重いギターリフが重なる。怒りを感じさせる激しい起伏を持つこの曲は、当時のクイーンのマネジャーであるノーマン・シェフィールドに対する曲だと言われている。デビューからの4枚のアルバムに関わっており、メンバーにとってはデビューからヒットまでを共に歩んできた仲間であったが、メンバーは非常に不利な契約に縛られてろくなギャランティーを得ていなかった。英米でヒットした前作発表後もそれは変わらなかった。「Death on Two Legs=2本足の死神」というタイトルと、冒頭の歌詞が当時のメンバーの心情を表している。

【歌詞 ※部分的に抜粋】

You suck my blood like a leech
お前はヒルみたいに血を吸い
You break the law and you preach
法律を破っておいて説教をする
Screw my brain till it hurts
痛くなるほど頭を締め付け
You’ve taken all my money and you want more,
金をすべて奪っておいて、まだ足りないとのたまう

  前作発表から間もなく、メンバーはノーマン・シェフィールドとプロダクションのトライデント社との法廷闘争をすべく弁護士を雇い、長い時間をかけてようやく彼らの契約から抜け出すことができた。その間、メンバーは新たなマネジャーとして、エルトンジョンのマネージメントで知られるジョン・リードを迎える(『全曲解説シリーズ クイーン』(2006)マーティン・パワー,シンコーミュージック・エンタテイメント,初版,pp59-60)

 世界的バンドには必ずと言っていいほど、とりわけキャリア初期に契約やギャラでトラブルを抱えるものだ。音楽業界にいる狡猾なビジネスマンは常に人気者の懐を狙い、一部のアーティストはそれに幻滅して業界を去ることもあるほどだ。クイーンもしかり。あのビートルズも多くの楽曲の版権を自分たちで所有していない。マネジャーと版権会社に版権を半ば強引に奪われ、その後さまざまな人間の手に渡り、途中マイケル・ジャクソンが所有、現在もまだポールは版権を取り戻す作業の最中にある(ポールとジョンがビートルズ楽曲の版権を失うことになった知られざる経緯とは – Gigazine)。

 1曲の解説が極端に長くなってしまったが、この曲はクイーンのキャリアや当時のメンバーの心境を知る上で重要な意味をもつ。また、楽曲そのものも、アルバムの始まりを告げるにふさわしい、一筋縄ではいかない内容を持っている。アルバム中でも「ボヘミアン・ラプソディ」に次ぐ濃さをもったものだ。

3.I’m in Love With My Car (Taylor)

 ロジャー・テイラー作・ボーカルの1曲。オーソドックスなハードロックサウンドで構成される。フレディーのピアノとロジャーのドラムが全編に渡って疾走感を生み出している。シンプルなフレーズのリフレインが徐々に変化を見せる構成は魅力的。

4.You’re My Best Friend (Deacon)

 シングル曲でベスト盤でもおなじみ、ジョン・ディーコン作。彼の軽快なベースラインとエレクトリック・ピアノのアクセントが聞き所。3分ほどのポップソングとして良くまとまっている。

5.’39(May)

 フォークギターの旋律とマルチトラックのボーカルのハーモニーが美しい、スキッフル・ミュージックを取り入れた名曲(『全曲解説シリーズ クイーン』(2006)マーティン・パワー,シンコーミュージック・エンタテイメント,初版,pp62-63)。

6.Sweet Lady (May)

 シンプルで力強いギターリフが全編に渡って曲を引っ張る、ハード・ロックナンバー。終盤にかけてのジャムが、アルバムの前半戦の終了を感じさせる。

7.Seaside Rendezvous (Mercury)

 オペラ的な演劇要素をもった楽曲。フレディとロジャーによるソプラノ、ブラスや木管などの楽器のボイスパーカッションが組み込まれ、にぎやかで騒々しい楽曲を生み出している(参考:Seaside Rendezvous – wikipedia(英語版)。フレディーの跳ねるようなピアノも印象的。

8.The Prophet’s Song (May)

 和約で「預言者の歌」というタイトルの通り、聖書の一説ノアの箱舟について歌った曲。 歌詞は雨と洪水に見舞われた世界に対して預言者が語り掛けるというもので、船に動物が乗る様子なども描かれている。クイーンがこういった楽曲をやると、やはりレッド・ツェッペリンを想起させるところがある。後半から始まる3分にも及ぶアカペラでのコーラスが印象的。後半にかけてハードになる展開も見どころの、8分を超える大作。
参考:The Prophet’s Song – Wikipedia

9.ラヴ・オブ・マイ・ライフ(Love of my life)(Mercury)

 ほぼピアノと歌のみで構成される楽曲。ボヘミアン・ラプソディを想起させる繊細で悲しげなピアノの旋律が非常に美しい。同局の歌詞のフレーズも聞こえる。ブライアン・メイのハープの音色も重なり、アルバム中もっとも美しいメロディーを奏でている。
参考:Love of My Life (Queen song) – Wikipedia

11.ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody) (Mercury)

 わざわざここで解説しなくともいいほどの楽曲だが、いろいろ書いてみる。

  1. アカペラ
  2. バラード
  3. オペラ
  4. ハードロック
  5. バラードである2.の延長

引用元:「ボヘミアン・ラプソディ」 – wikipedia

 楽曲の構成は上の通り。

 1.はおなじみのピアノフレーズ(と「ママ~」)が始まるまで。

 2.は楽曲の世界観と物語の導入部分。主人公の少年が「人を殺してしまった」「人生は始まったばかり」「しっかりしなきゃ、たいした問題じゃない」という絶望。「もう何もかも遅すぎる。僕の順番がきた」「さようならみなさん、僕は行かなきゃならない」「僕は死にたくない」と続く。

 3。は狂ったほどの多重録音のコーラス部。ここでは悪魔から逃れようとするが、「絶対に逃がさん」と追いつめられる。

 4.ではハードに転換し、クライマックスを迎える。ここの歌詞を訳してみよう

【歌詞 ※部分的に抜粋】

So you think you can stone me and spit in my eye
僕に石をなげつけて侮辱しようと思っているのか
So you think you can love me and leave me to die
僕を愛しているといいながら、見殺しにするんだな
Oh baby – can’t do this to me baby
そんなひどいことをしないでくれよ
Just gotta get out – just gotta get right outta here
今すぐここから逃げ出さなきゃ

Ooh yeah, ooh yeah
Nothing really matters
何も問題ないさ
Anyone can see
皆気づいているんだ
Nothing really matters – nothing really matters to me
何も問題ない、気にすることはない
Anyway the wind blows…
なるようになるだけさ

 自分の犯した罪を後悔し、救いを求め、悪魔から逃げようとする。そして最後は諦め、悟ったようにすべてを受け入れる。ラストはハードロックということで、「吹っ切れた」と言ってもいいだろう。

 この歌詞を額面通りに受け止めてもいいが、裏に秘められたメッセージももちろんある。歌詞では「人殺し」となっているがそれは比喩であり、主人公が犯した罪は別にある。ある大きな罪を犯し、自分を生んだ母へ謝罪する。悪魔の手から逃れようとし、最後は吹っ切れてハードロックを歌う。

 結論はあえて言わないでおくが、作曲者のフレディーはいろいろなコンプレックスを持った人物であるのは周知のことだろう。イギリス領であった東アフリカはタンザニアの島にて、ペルシャ系インド人の両親の元に生まれたことで、そのオリエンタルな容姿も含めて人種的な差別も受けただろうと想像できる。また、彼は最終的に「性」に起因する病気で命を失ってしまう。今でこそ性に関していろいろな意味で開放的な世の中になりつつあるが、今でもキリスト教圏では激しい差別を受けることもある。そういった意味で、フレディは一度「死んだ」のである。新たな人間として生まれ変わり、ハードロックを歌うのである。この曲はそういう部分も含めて、クイーンにとっての代表曲となっている。

洋楽

Posted by hirofumi